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チョコレートありがとうございました! [その他]

バレンタインのチョコレートを各社さんより転送していただきました。
私なんかにほんと、ありがとうございます(汗)!
とても嬉しいです。原稿のおともにさせていただきますね。
転送くださいました各社担当様もありがとうございました。

何かお礼を……と思ったのですが、書き下ろすことが今ちょっとできない状態で(汗)
以前、同人誌として出したショートを「続きを読む」の下に置いていきますね。
ちょっと気が早いホワイトデーです(笑)。

本当に皆様、どうもありがとうございました。
心より御礼申し上げます。『余計なお世話』


「おう、なんだよ。急に呼び出しやがって」
 ここは新宿二丁目のホモバー『three friends』。営業時間は午後十時からなのだが、それより三十分ほど前に、納はこの店のマスター――というかママというか――のミトモに呼び出されたのだった。
「あら、ご挨拶ねえ。どうせ暇してたんでしょ?」
 一見外国人のショーモデルかと思わせる彼の美貌が実は、類稀なるメイクテクの賜物だと言うことを知る人間は、そう大勢はいない。
 納も実は彼の『別人のようだ』という素顔を拝んだことはないのだが、彼の先輩刑事がこのミトモとは古い付き合いだそうで、その男経由で納もそう大勢はいない『知る人間』となっていた。
「暇なわけねえだろ。もう、朝から晩まで大忙しよ」
 暇人扱いされたくないと納がじろりと睨むのに、
「違う違う、そういう意味じゃないわよう」
 ミトモはケラケラと笑ったあと、悪戯っぽい目で納をじっと見据えた。
「『今夜は』暇なんじゃないかと思ってさ」
「今夜?」
 なんだ、と首を傾げた納の前で、
「やっぱりねえ」
 またもミトモがけらけらと笑う。
「なにが『やっぱり』だ?」
 からかわれるのは面白くない、と憮然とした顔になった納だが、ミトモがカウンターの下から綺麗にラッピングされた小ぶりの包みを取り出し、
「はい」
 と差し出してきたのに、戸惑いも新たにこの、作られた美貌の店主を見返した。
「なんだ? これ」
「あのさ、今日、何の日だかわかる?」
「今日?」
 何日だったか、と納が手帳を出そうとするのに、
「ああ、もう、本当にあんたって人は」
 ミトモが呆れた声を出し、店にかかっていたカレンダーをバシっと指差した。
「三月十四日よ。ホワイトデーよ。わかってる?」
「……ああ、そういやそうだったよな」
 たった今、思い出したとしか思えないリアクションをとった納を前に、ミトモはまた、やれやれ、というように肩を竦めたあと、気を取り直し、
「だから、はい、これ」
 にっこり笑って納に向かい、その小さな包みをずい、と押しやった。
「何が『だから』なんだ?」
「アタシからお返しよ」
「お返し?」
「ほら、バレンタインの日に新宿サメ、ヒサモと飲みに来てくれたじゃない。そのお礼よ」
「……ああ……」
 そういえば先月、先輩刑事とともにこの店に来たのだったが、それがバレンタインの日だったか、と記憶を辿っていた納にミトモは、恩着せがましくまくし立て始めた。
「バレンタインにこんなところでクダまいてるようじゃあ、ホワイトデーもきっと一人に違いないと思ったのよねえ。まあ、常連さんへの気配りっていうの? 寂しい夜を過ごすくらいなら、ウチで飲んだらどうかしらって思ったってわけよ」
「そりゃ、親切なこって」
 余計なお世話だ、といわんばかりに納がミトモを睨む。
「そう。アタシは親切なオカマよ」
 ミトモは笑うと、「ボトルでいいかしら」と納にオーダーを取った。
「それにしてもホントに、新宿サメにはイイ子、いないの?」
 はい、と水割りのグラスを差し出してきたミトモが、にやにや笑いながら問いかけてくる。
「うるせえな」
「バレンタインに『これ、もらってくださぁい』なんていう可愛子ちゃんの一人や二人、いそうなもんだけどね」
「世辞言っても一杯飲んだら帰るぜ」
「あら、お世辞じゃないわよ。世の中不景気だから、公務員は人気職業だって言うじゃないの」
 ミトモはそう言ったあと、にやり、と笑って新たな質問をし始めた。
「それじゃあさあ、この子からバレンタインにチョコ欲しかった、って子はいないの?」
「……え……」
 ミトモの問いかけに、納が一瞬言葉に詰まる。
「あら、いるのね」
 さすが新宿二丁目に巣食うこと十数年――二十数年という噂もあるが――今や二丁目の『ヌシ』とも呼ばれるミトモの目はそう簡単には誤魔化せない。
 こと色事に関してはエキスパートと豪語して憚らない、そして実際エキスパートらしい彼の目がきらりと光ったかと思うと、物凄い勢いで納を問い質し始めた。
「一体誰なのよう。白状なさいって。上手くいくようにアドバイスするわよう。職場の子? それとも店か何か? まさか高校時代の同級生とかじゃないわよねえ」
「別にどうでもいいじゃねえか」
 納の顔が次第に真っ赤になってゆく。
「可愛いんでしょ? 新宿サメ、実は面食いだものね。それにあんた、結婚に夢抱いてそうなタイプだから、その子、料理上手、家事上手と見たわね」
「勝手に分析するなよな」
 納がたじたじとなってしまっているのは、まさにミトモの分析が当たっているからである。実際彼はバレンタインの日にチョコレートを送って欲しかった相手がいた。
 可愛くて綺麗で、性格もよくて料理上手――納の頭の中にある人物の像が浮かぶ。
「それにあんた、古風だから、帰ってきたら三つ指ついて、とか言いそうよね。毎日玄関でお出迎え、『おかえりなさいませ、旦那様』なんて言われてさあ」
「だ、だんな様…」
 調子に乗ったミトモの話が、納の頭に妄想を呼び起こしてゆく。
「それにあんた、実は相当スケベだから、三つ指つかせるのにメイド服着せたり、あは、裸エプロンとかさせたりしそうよねえ」
 納めの頭の中で、『彼』が三つ指をつき、「おかえりなさいませ、旦那様」と深々と頭を下げてくる。
 華奢な身体を覆うものは白いフリル付きのエプロン一枚。
『お鞄お持ちします』 
 立ち上がって鞄を受け取り、くるり、と踵を返した彼の後ろ姿、ぷるん、とした可愛い尻がエプロンの間から見え隠れして――。
「う……」
 ぽたり、と顔を覆った手の間から、鮮血がカウンターへと滴り落ちた。
「ちょ、ちょっと、新宿サメ?」
 大丈夫、とミトモが慌ててお絞りを納に渡す。
「す、すまねえ……」
「大量出血ねえ」
 呆れながらも心配そうな声を出したミトモが、大丈夫、と再び尋ねながら納の顔を覗きこんでくる。
「だ、大丈夫だ」
 コンコンと頭の後ろを叩いている納にミトモは、
「妄想して鼻血出してるようじゃあ、新宿サメの春は遠いわねえ」
 これまた余計なお世話な――それでいて真実に違いないことを言うと、「うるせえ」と凶悪な顔で睨みつけてくる彼に向かい、ぱちり、と作りものの長い睫を瞬かせるウインクをしてみせたのだった。
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