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バレンタインのチョコ、ありがとうございました! [その他]

編集部様より、バレンタインのチョコを転送いただきました。
私なんかにほんと、申し訳ないです(汗)。
恐縮しつつも、とても嬉しかったです。
皆様、本当にどうもありがとうございます!
原稿のおともにさせていただきますね。
お送りくださいました担当様もありがとうございました。

バレンタインなので何かショートでも、と思ったのですが、ちょっとその時間がなく(汗)。もう何回目だよ! という罪シリーズのバレンタインショート(以前サイトに掲載していたものです)を「続きを読む」の下に置かせていただきますね。
多分お読みになられたかたのほうが多いかも(汗)。
よろしかったらどうぞご覧くださいませ。

私のバレンタインは会社で同じ課の後輩ちゃんたちと義理チョコを配ったくらいでした。あ、自分用にもそのとき買ったんですが、自分用に買ったのが一番高かったです(笑)。


『バレンタイン★キッス』



 これはもう、魔が差した、としか言いようがない。

 綺麗にラッピングされた包みを前にいったいこれをどうしたものか、と俺は大きく溜息をついた。
 
 今日、接待前に客に渡す手土産を買おうと百貨店の地下食品売り場に向った俺は、いつも用意している部長お気に入りの「アンリ・シャルパンティエ」で、五千円の詰め合わせを用意してもらっていたのだが、ふと傍らに積んであった『それ』についつい目がいってしまったのだった。思わず
「これも。あ、この分、領収証はいりませんので」
 と購入してしまった俺を見て、販売員は笑いを堪えるような顔をしたのだったが、どういう想像をしたかは簡単に予想がついた。
 そう、モテない男が見栄を張るために買ったに違いない、としか思われないであろうそれは――チョコ、だった。

 本当に魔が差したとしか思えなかった。そうじゃなかったら、百貨店の店内で煩いくらいに繰り返される売り子の声に乗せられたとしか思えない。今日は2月12日――2日後の14日は、チョコレート会社が一年中で一番の売上を見せる(のだろうか)バレンタインデーなのだった。
 そもそもこのバレンタインデーに、女性が自分の思いを乗せたチョコを男性に贈る、というのは日本独自の風習らしい。半世紀ほど前にメリーチョコかどこかがはじめたキャンペーンが発祥らしいのだが、海外では男女を問わず想い人に何か贈り物をする日であるという――ってバレンタインの解説はこの際どうでもいいが、そんな日本の風習を何故自分はちらとでも実践しようなどと考えてしまったのだろう、と俺は目の前の赤い包装紙に包まれたチョコの包を見て大きく溜息をついた。まあ、良平は酒も飲むが甘いものも嫌いじゃないので、あげれば喜んで食べるかもしれないが、問題はどうやってあげるかだ。
 そもそも男が男にチョコをあげるなんて、どう考えてもヘンだ。
『バレンタインだから、買って来たんだ』――というのもなんだし、
『これ…』――と頬を染めて渡す、というのはもっとおかしいだろうし、
『まあ、シャレだと思って』――なんて軽口を自分が叩けるとも思えないし、
枕もとにこっそりおいておいて、翌朝『なんや、これ』――じゃ、季節はずれのサンタクロースか、というツッコミを受けそうだし、一体どうしたものか、と俺が包の前でうーん、と腕組みをしたとき、ドアチャイムの音か室内に響き、良平の帰宅を知らせた。
「はい」
 俺は慌ててチョコの包みを鞄に突っ込むと、鍵を開けてやるために玄関へと向かった。
「ただいまあ」
少し疲れたような良平の声がドア越しに聞こえてくる。接待を済ませてきた俺より遅い時間、しかも俺のように飲んでいたというわけでもないだろうから、疲れていて当然なのかもしれない。俺が接待だと言ったら、自分もメシは外で済ませてくると言っていたけれど、食べる暇などあったのだろうか、と思いながら俺は急いで鍵をあけ、ドアを外側へ大きく開いた。
「ただいま」
 やはり少し疲れた顔をしている良平がにっこり笑いながら入ってくると、その場で俺を抱き寄せ、唇を落としてきた。
「おかえり」
 恒例の『おかえりのチュウ』を簡単に済ませると、
「メシ、食ってないだろ?」
 と彼を見上げた。
「なんでわかるん?」
 俺の背を抱いたまま驚いた顔で彼が見下ろしてくるのに、
「そりゃわかるよ」
 と返してはみたものの、良平があまりに
「え?え?ほんま、なんで??」
 と不思議がって見せるのに、胃のあたりがへこんでいるような気がしたというだけの根拠とはとてもいえなくなってしまい、
「今、用意するから」
 と適当に誤魔化すと、俺は彼の腕をすり抜けキッチンへと足を運んだ。
「刑事並みの洞察力やね」
 ほんま、まいったわ、と、良平はまだ感心していたが、俺がどうしようかな、と冷蔵庫を開けて悩んでいるのを見ると、
「ああ、ほんま、ええよ?ご飯食べてくる言うたのに食べへんかったんは僕が悪いんやし」
 とあまりに気を遣ったことを言ってきた。
「『食わなかった』んじゃなくて、『食えなかった』んだろ」
「まあな」
 苦笑する彼に、俺は冷凍しておいたカレーと白飯を、簡単だけどこれでいいか、と示してやると
「ほんま、おおきに」
 と良平は言いながら、リビングへとコートを脱ぎに戻っていった。電子レンジでそれらを温め、こんなことなら何か買ってくればよかったかな、と思いつつリビングへと戻ると、なんと良平は俺の鞄の中をのぞきこんでいるじゃないか。
「おいっ」
 何してるんだ、と慌ててカレーをテーブルに置いて彼の方へと駆け寄ると、
「…えらい気が早い女の子もいるもんやねえ?」
 嫌味丸出しの口調で良平は俺の鞄の中から、あのチョコの包を取り出し俺へと示してきた。
「そんなんじゃないよ」
 返せよ、と取り上げようとすると、良平はひょいそそれを高く掲げて
「アンリシャルパンティエ、懐かしいなあ。このサイズやと結構、値段もするんちゃう?」
 などと言いながら一通り包を検分し、
「やめろって」
 と怒声を上げかけた俺に、はい、と簡単に返してくれた。
「ほんま、おやすくないわ。二日も前に渡してくれる、ゆうんは結構本命やったりして?」
 探るような眼差しを向けてくる彼に、
「違うって」
 と答えながら、俺はもう一度それを鞄へと仕舞った。しかし、いつもなら俺の鞄になど興味を示さない彼が、こんなときに限って中を覗いてくるなんて、と
「それにしてもよくわかったな」
 と呆れたように彼を見返すと、
「刑事のカンを舐めたらあかんよ」
 と良平は笑って俺の肩を叩き、いただきまーす、とテーブルへと向っていった。
 すごい勢いでカレーを平らげた良平は、相当腹をすかせていたらしい。
「ああ、ようやく落ち着いたわ」
 などと言いながら皿を片付けようとするのを、「俺がやるよ」と制した俺の手首に、良平の手が伸びてきた。
「なに?」
 皿をテーブルに戻しながら見下ろすと、良平は取った手を軽く引いてくる。そのまま彼の膝の上に倒れ込んだ俺の背にもう片方の手を回し、良平は俺を抱き抱えるようにして唇を重ねてきた。
「……ん……」
 俺も彼の背に両手を回し、互いの身体を密着させる。まだ二人とも外していなかったタイが互いの胸を圧し、それに気づいた良平が俺のタイを緩めてきた。おかえし、というように俺も片手を前に回して彼のタイの結び目に手をかけ、それを緩めてやりながら、ワイシャツのボタンを外しにかかる。
「……酔うてるの?」
 僅かに唇を離した良平にそう囁かれ、俺は今更のようにいつにない積極的な自分に気づいて慌てて彼のシャツから手を退けた。
「今更照れんでもええやん」
 良平はそう笑いながらも再び唇を落としてきたが、せや、と何かを思い出したように小さく声をあげると、
「……さっきはごめんな」
 と俺の目を見下ろしながら、小さな声でそう言った。
「さっき?」
 謝られることなんかあっただろうか、と首を傾げた俺に、良平は
「ついついヤキモチ妬いてしもて……ごろちゃんが女のコにモテるんは仕方ないことやのに、かんにんな」
 申し訳なさそうにそう頭を下げる良平の言葉の意味が、俺には全くわからなかった。俺がどうして女のコにモテるなんて思うんだ?――と、ここで俺は、ようやく先程のチョコのことを思い出した。
「違うって」
 良平はまだ、あれを俺が誰かに貰ったと勘違いしたままだったらしい。慌ててそう否定する俺に、
「違う?」と眉を顰めた良平に、俺は思わず
「あれは俺が買ったんだよ」
 と本当のことを言っていまい――しまった、と今更のように息を呑んだ。
「ごろちゃんが?」
 良平は益々不審そうに眉を顰めて俺を見下ろしていたが、やがて、これ以上はないというくらいのやにさがった顔になっていった。
「……ごろちゃんが買うたの?」
 にやにやと笑いながら、良平が俺に額を合わせてくる。
「……うん」
 ああ、気づかれてしまった――が、誤解されたままよりはよかったかもしれない。そう思おうとしても、どうにも照れ臭さが先に立ってしまい、俺はぶっきらぼうにそう小さく頷くと、彼から顔を逸らせてその腕から逃れようと身体を捩った。
「誰にあげよう、思うたんかな?」
 逃げようとする俺の身体を、おっと、と声を上げながら良平は更に強い力で抱き寄せてくると、更にやにさがりながら俺の顔を覗き込んでくる。
「……別に。自分で食べたくなったんだよ」
「ふうん」
 にやにや笑いが止まらない良平は、とっくに俺の嘘を見抜いているようだった。
「ほな、食べよか?」
 良平は俺を抱き抱えたまま片手を俺の鞄へと伸ばすと、中からチョコの包を取り出し、はい、と俺に示してみせた。
「……うん」
 俺は手を彼の胸について身体を離すと、チョコの包を受け取り、改めて良平の顔を見返した。
「辛いカレーのあとは甘いモンてね」
 くすくす笑って俺を見る良平の鼻を明かしてやりたかった、というのが動機だった――はずだったが、実際彼にチョコを差し出した手は思った以上に震えてしまった。
「……本命だから」
 冗談めかして言うはずが、口に出した途端、恥かしさのあまりかあっと血が頭に上ってしまい、まるで女子中学生が憧れの先輩に告白するようなおどおどした口調になってしまった。そのことが尚更に俺の羞恥を誘い、思わず差し出したチョコを引っ込めようかとしてしまったのだったが、良平はそれより先にそれをわしづかむようにして受け取ると
「…………ほんま、おおきに」
 と少しもからかう口調でなく、にっこり笑って俺を見た。
「……うん」
 頬が燃えるように熱い。こんな照れ臭いことするつもりではなかったのに、と俯く俺の目の前で、良平は包を丁寧に開け始めた。
「アンリシャルパンティエゆうたら、うちの姉貴が二人とも好きでな、よう買いに生かされたもんやわ。フィナンシェが美味しかった記憶はあるんやけど、チョコも美味しそうやねえ」
 そういえばアンリは芦屋が本店だった。良平があの姉さん二人にパシリに使われていたということは、あまりにも容易に想像できて、俺は思わず笑ってしまった。
「ああ、ほんま、美味しそうやわ」
 箱を開けながら良平は、中身を俺に見せてくれ、そのうちの一つをぽん、と口に放りこんだ。
「美味しいわ」
 そしてもう一つを手にとると、俺の口元に持ってくる。
「はい、あーん」
 にっこり笑う彼の言葉に釣られてしまい、気づけば俺は彼の前で大きく口をあけていた。
「ええ子やね」
 ぽん、とチョコを俺の口に放り込んでくれながら、良平が俺と額を合わせてくる。
「美味しい」
 口の中に広がるチョコの心地よい甘さに、そう言って彼に微笑みかけたとき、良平の片手が俺の首の後ろへと伸びてきて、引き寄せられたと思ったときには唇をふさがれていた。まだチョコの乗っている舌に良平の舌が絡んでくる。二人の舌の間でチョコはあっという間に解け、甘い香りと味がを互いの咥内を満たした。その甘さを拭いとるかのように良平の舌が俺の口の中で暴れ回る。いつしか貪るような激しいくちづけをかわしていた俺は、思わず彼の背に手を回し、崩れ落ちそうになる身体を支えてしまっていた。それでも良平は俺の唇を解放してはくれず尚も激しく舌を絡めてくるのに、息苦しくなってたまらず顔を背けると、
「かんにん…」
 ようやく唇を微かに離してくれた良平が、俺に掠れた声で囁いてきた。
「……え?」
 大きく息を吸い込んだあと、なにを謝っているのだろう、と彼を見上げると
「チョコ…なくなってもうたね」
 くす、と笑いながら良平がまた唇を寄せてくる。
「……もいっこ、食べようか?」
 キスの寸前でそう囁き返すと、良平は何時の間にかテーブルの上に置いていたチョコをちらと見やったあと、
「ええわ」
 と再び俺に唇を寄せてきた。
「もっと甘いモンが食べたいってな」
「もっと?」
 甘いものってなんだろう――彼のシャツの背を掴み直しながらそう尋ねる俺に、良平はまたも相好を崩し捲くった笑顔を見せた。
「そんなん、ごろちゃんに決まっとるやないか」
「……馬鹿」じゃないか、と言う言葉は途中で良平のキスに飲み込まれてしまった。

 バレンタインにチョコの残り香を残す甘い甘いキス――というのはあまりにもベタだと思いつつ、折角だから一年に一度のこの行事に乗ってやろうと、俺もその『甘いキス』に没頭するため、良平の背をぎゅっと握りしめたのだった。


(以下、おまけです)

tonight



「ん……っ」
 ベッドに移動したあと、あっという間に裸に剥かれた。シャワーを、と言おうとした唇を良平の唇が塞ぐ。彼の唇は俺の顎から首筋、胸へとゆっくりと降りてきて、俺の胸の突起を舐りはじめた。
「……っ」
 もう片方の胸の突起を捏ね繰り回されるように愛撫されながら、舌で、歯で、転がすように、ときに軽く噛むように、彼の愛撫が続いてゆく。胸に性感帯があることなど彼と関係をもつまで知らなかった俺だが、最近では両胸をそうして弄られるだけで昂まるようになっていた。強いくらいに噛まれると更に俺の雄は固さを増す。痛痒い、もどかしいような感触はいつしか快楽という顔をもち、彼に胸を弄られるだけで、たまらないような思いを俺に抱かせるようになっていたのだが、良平もそれに気づいているのか、最近では俺の胸を執拗なくらいにいつまでも離そうとしない。我慢できなくなった俺が己の雄を彼に擦り付けるように腰を動かすのを待っているかのように、いつまでもいつまでも胸から顔をあげようとしない良平の、考えようによっては意地悪な所作は、最近では俺たちの閨の中での約束事のようにさえなっていた。
「……んっ」
 今日は少し酒も入っているためか、普段感じる羞恥が薄れているような気がする。気づけば彼の頭をきつく抱き寄せるように腕を回してしまっていた自分の大胆な所作に今更のように気が付き、俺は慌ててその手を解くと、彼の肩を掴んで顔を上げさせようとした。
「……なに?」
 小さく灯した明かりの下、顔を上げた良平の瞳に映る輝きが俺から言葉を奪ってゆく。
「……我慢でけんようになった?」
 くす、と笑って片手を俺の雄へと伸ばしてきた良平は、勃ちかけたそれをゆっくりと愛撫しながら俺の顔を見上げつづけた。
「……や…」
 零れる吐息が自分でもどうしたのかと思うくらいに甘い。更に彼の肩に手をやり、自分の上から押し退けようとすると、良平はその動きにあわせるように身体をずり下げていき、そのまま俺の開いた両足の間に顔を埋め、手にした俺の雄を口へと含んだ。
「……っ」
 きつく絡まる舌の動きに、俺は思わず息を呑み、その快楽から逃れようとでもするかのように反射的に身体を捩ってしまった。その動きを制するかのように良平は両手で俺の太腿を掴んで己の方へと引き寄せると、尚も俺の雄をその喉の奥まで飲み込み、ゆっくりと唇に力をいれてまた外へと取り出そうとする。
「……やっ…」
 片手で竿を扱き上げられながら、先端を舌で舐られる快感に俺の口からは堪えきれない声が漏れた。鈴口を舌で割られ、執拗に舐られてゆくうちに先走りの液が流れはじめ、彼の掌の間で濡れたような淫猥な音をたててゆく。そのまま彼はその手を俺の後ろへともってゆくと、俺の尻を掴み、その白濁の液をそこへと――彼を受け入れる場所へと塗りこむように動かしはじめた。
「……あっ…」
 指でそこを広げられ、中にまで俺自身の零した液を塗り込めてゆくその動きに、気づかぬうちに俺の腰は浮き、指を待ちわびるかのように動きはじめる。それに気づいた良平は、俺を咥えたまま顔を上げ、にっと笑ってみせたあと、そのまま舌を下へと這わせていったかと思うと、俺の腰をあげさせ、指で広げたそこへと侵入させてきた。
「……やっ…」
 彼の舌の先端が差し入れられた途端、その熱さと硬さに俺は思わず大きな声を上げてしまった。両手で双丘を割りながら、良平は更に奥まで舌を挿入させようとする。唇と歯で入口を舐られ、それだけでもたまらない気持ちになるのに、内壁を擦るざらりとした彼の舌は急速に羞恥の心を奪っていくほどの快楽を俺へと与えていった。
「やっ……はぁっ……あっ……」
 気づけば俺は、獣のような声をあげながら、自ら腰を更に持ち上げ、彼の肩へと両足回してしまっていた。そのままぎゅっと脚に力をこめ彼の頭を近くへと導こうとした俺の意図を察した良平は、一旦顔をあげるとおもむろに俺の身体をうつ伏せにさせ、四つん這いのような姿勢をとらせた。
「やっ……」
 とても両手をつくことが出来ず、高く尻を掲げさせられたような姿勢になってしまったことに対する羞恥は、再び彼の唇がそこへと寄せられたことであっという間に消えうせた。彼の親指が広げたそこに、差し込まれる良平の舌は、まるで独自の生き物のようにぬらぬらと俺の中で蠢き、内壁を擦りあげて行く。
「やっ……あっ……」
 目を開くと自分の両脚の間から、彼の雄が屹立しきり、腹につきそうになっている様が垣間見え、尚更に俺を昂めていく。快楽のうねりが再び俺を捉え、俺の内腿を震わせたが、気づかぬうちに腰を振り始めた俺が求めているものは、舌よりも力強い、そして舌よりも俺の奥深いところを満たしてくれる何かだった。その『何か』を求め、肩越しに振り返った俺の視線に気づいたように、良平はそこから顔を上げ、真っ直ぐに俺を見返してきた。
「……」
 言葉は交わさなくても、互いの求めることは一緒であることがこれほどわかるときはなかった。良平は小さく頷くと、再び俺の身体を仰向けに返し、両脚を掴んで己の方へと引き寄せたあと、一気にそこへと彼の雄を捻じ込んできた。
「あっ……」
 行き成りの激しい突き上げに、俺の口からはまた高い声が漏れ始める。
「やっ…あっ……あぁっ……」
 俺の雄も屹立しきり、腰を上げされられているために自身の腹をこすっていた。良平は腰を激しく動かしながら、そんな俺の雄を片手で握り込むと、そのまま激しく扱き上げはじめる。
「やっ…もう…っもうっ…」
 出る、といおうとした瞬間、俺は彼の手の中で達してしまっていた。
「うっ」
 達した瞬間、俺の後ろはきつく締まり、良平はその刺激で達したようで、低く声を漏らしながら、俺の身体の上へとゆっくりと倒れこんでくる。
「………」
 はあ、と大きく息をはきながら、俺はそんな彼の背を、緩慢な動作で抱き寄せようと両手を回した。胸の鼓動が驚くほどに早い。良平の背も汗ばんでいたが、彼が髪をかきあげてくれた俺の額も、そして身体も、冬だというのにびっしょりと汗で濡れていた。
「……どやった?」
 くす、と笑いながら良平が俺の顔を覗き込んでくる。
「どう?」
 何がどうなのだろう、と思いながら整わない息の下、そう彼を見上げると、
「今日はチョコのお礼に、めいっぱいサービスしよう思うとるんやけど、一回目はあんなんでよかったかな?」
 あまりにも下品なことを言ってくる良平の背から俺は両手をつき、どん、とその胸を押し上げた。
「……痛っ」
「馬鹿じゃないか?」
 最近めっきり『エロオヤジ』くさくなってきた彼の飛ばしっぷりに、呆れてそう睨み上げると、
「なんや、まだまだ足りへんかったか」
 と良平は全く別の解釈でもって俺の身体を抱き締めてくる。
「ちがっ…」
「ほな、インターバルなしでもいっかい、挑戦や」
 いや――多分、正当な解釈をした上での行為なのだろう。それがいやになるくらいわかるウィンクを俺に落とした良平は、
「ちょっ…やめっ…」
 と慌てて逃げようとする俺の身体を再び抱き寄せ、彼の雄を挿入したままになっていた俺の腰を更に高くあげさせたのだった。


 『二回目』『三回目』までくらいは記憶があるが、それ以降はすっかり意識を飛ばしてしまった俺が、朦朧としながら最後に心に誓ったのは、来年のバレンタインはこの『サービス』を避けるためにもチョコはやめておこう――ということだった。
 来月3月14日の『おかえし』もあったのだ――という脅威を抱えつつ、俺は満足そうに俺を抱き締める良平の腕の中で、バレンタインのイブイブの今夜、疲れ果てて眠りについたのだった。
 
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